大阪高等裁判所 昭和29年(う)2319号 判決
まず職権をもつて記録を調査し、原裁判所の構成の当否を考えてみると、本件は、神戸地方裁判所尼崎支部に対し、三回にわたつて起訴されているが、その起訴状記載の公訴事実は、要するに、被告人は、公衆衛生並びに公衆道徳上有害な業務に就かせる目的で、昭和二十七年十二月二十七日頃から昭和二十九年八月七日頃までの間、三十三回にわたり、貸席業者又は待合業者に対し、婦女子を売淫婦として職業紹介をしたものである、というのであつて、罪名及び罰条は、職業安定法違反、同法第六十三条第二号と記載されており、これに対し、原審は、裁判官日下基の単独構成をもつて審理をして、右起訴状記載の事実と同趣旨の事実を認定し、これに職業安定法第六十三条第二号を適用して被告人を懲役二年に処し三年間右刑の執行を猶予する旨の判決をしたのである。しかし、同条の規定する法定刑は、一年以上十年以下の懲役又は二千円以上三万円以下の罰金であるから、たとえ選択刑として罰金が定められていても、罰金の外に自由刑が短期一年以上と定められている以上は裁判所法第二十六条第二項第二号にいわゆる「短期一年以上の懲役にあたる罪」に該当するものと解すべく、本件は裁判官の合議体で取り扱わなければならないことが明らかである。然らば原審は本件につき、法律に従つて判決裁判所を構成しなかつたものであるから、この点において破棄を免れない。
よつて検察官の論旨に対する判断を省略し、刑事訴訟法第三百九十七条、第三百七十七条第一号に従い原判決を破棄し、同法第四百条本文によつて本件を原裁判所に差し戻すべきものとする。
(裁判長判事 松本圭三 判事 山崎薫 判事 西尾貢一)